A
心のない人間は絶望を捨てていい代わりに、愛情や友情を知らない。
次へ繋ぐのだ、不完全でも、なにがなんでも
繋ぐものは命だけではない、私は次々と来る若い命がめいいっぱい輝くことができるようにしたい。
私は、人間の不完全な部分を愛したい。
完全を追い求めて、不完全な存在にしわ寄せを、不完全な部分を押し付ける人間にはなりたくない。
そして私は、自分の受けた生命を大切にしたかった。私は、私より長く生きている人間に、この世界の全てを肯定して欲しかったんだと気づいた。
大丈夫、世界は美しい。私がそれを証明した、だから安心して生きなさい。
と誰かに言って欲しかった、そう思わせて欲しかったんだなと思った。
私の生きるこの世界は矛盾で溢れていて、絶望や幻滅、焦り、不安、憎しみがうようよしていて
それでもどうしようもなく美しいから、そういう瞬間が一瞬でもあるから。
だから次に繋ぐ、不完全で完璧じゃなくて、欠点なんてありありで、ぼろぼろでも
戦禍で生きるまひと、彼は人間らしさをこめかみにつけていたな。
私はそういうのが好き、人間の心の部分だから、影の部分だから。
彼は強かったな、不完全な存在に不完全な部分を押し付けなかった、認めて、その死体が次の姿になれるよう、きちんと埋葬した。
なつこさんのお前なんか大嫌いだ。も同じくらい好き、彼女が幻じゃないと信じることができるから。
誰かの悪意で人が死ぬ、まただよ。私は、また罪のない誰かが死ぬのを横目で見ているだけになる。本当に無力だ
己の完全性を証明するために、また誰かが犠牲になる。そういう醜さを、卑しさが、ぐちゃぐちゃになってひとつにまとまって、世界を覆い隠してしまうんじゃないかと思って怖かった。
私は、至福を感じながら生きたい。愛情に友情に、喜びに嬉しさを感じながら、生きたい
絶望のない至福はどこにもない、本当にそう思う。
私はこの世界を少し愛することができたと思う、生きる気力が湧いてきた。